「愚に還る」講師:町田宗鳳

町田宗鳳先生というのは、1950年京都生まれで、現在は広島大学
大学院教授で、「比較宗教学」をおもに研究しておられる。
経歴は波乱万丈というべきだろう。
先ずは、14才、中学2年生のとき出家する。
自宅が大徳寺のそばにあったということもあるが、幼い頃から病弱で
あった彼は、「死というもの」をよく考えさせられたという。
それに、きびきびと作務に励む、りりしい若い修行僧を間じかに眼に
することがしばしばあった。
肉体的鍛錬にあこがれたのか、周囲の反対を押し切り出家を決意する。
20年の長きにわたる修行の末、国際的禅学者の鈴木大拙に憧れ、
また日本脱出、世界に羽ばたくことを夢見た彼は幸運にもハーバード
大学の特別研究生として受け入れられ、神学を学ぶ。
19年の海外生活の後、現在に至る。
偶然にも、彼の教育テレビ、早朝5時からの「こころの時代」という番組で
「法然を語る」というテーマで出演の町田宗鳳先生のことを知る。
「興味深いひとだなあ!」と惹かれ、彼の著書をいくつかアマゾンで買
って読んだ。
それからしばらくして、縁があるのか、在所で彼の講演会があると聞いた
のである。
「渡りに船」と勇んで、21日の日曜日猛暑の中、出かけた。
それは、かずぼうが座禅に通っている桂林寺の本堂で行なわれた。
舞鶴宗教懇話会の創立5周年記念大会のイベントであった。
いろんな宗教の人びとのグループが世界平和を祈念し、各宗派の交流
を図り相互理解を深めるという趣旨のようである。
1時半より、汗の吹き出るような熱気の中、講演会は始まった。
町田先生は若々しく、声のよく通るアルトの美声で、笑顔の絶やされな
い紳士然とされた人であった。
講演内容も、スポンジに水が吸い込まれるような気分で、かずぼうの
こころに素直にしみわたる。
金融危機に翻弄され、生きる意味や喜びを失った人々が増える中、
経済至上主義や物質文明のいきずまりが叫ばれ、混迷を深める社会
にあって、どうしたら平和に、生きる喜びを感じられるか?
彼は、「愚に還れ!」とひとことほほ笑んで言う。
彼の研究対象・法然の言葉、「愚痴に還りて、極楽に生きる」から由来し
ているらしい。
知性や理性を高く評価してきた近代文明において、人間がみずから
の中にひそむ”エゴ”という怪物の餌食になりつつある。
近代文明は自然破壊と貧富の差の拡大によって"バベルの塔”と化し
崩壊の危機に瀕している。
"愚"に徹することによってやさしくて慈しみあふれる信頼の世の中を
作ってゆきたい。
「本当に偉い人は、バカになれる人」と言い、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」
の詩を引用する。
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ 瞋ラズ
イツモシズカニワラッテイル
・
・
・
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイウモノニワタシハナリタイ
最後に、"トイレ掃除の天才”ともいわれるイエローハットの創始者
鍵谷秀三郎さんを取り上げ、社長みずから率先してトイレ掃除やゴミひ
ろいに徹する姿をスライドに映し出し、「愚に還る」大切さを披露されて
講演は終わったのである。
世の中には偉い人はたくさんいるものである。
それはお金持ちだとか名声があるとか肩書きがたくさんあるとというと
ではない。
それは、毎日の平凡な生活を、丁寧に誠実に黙々と、愚に徹して送っ
ておられる人たちのことをいうのであろう。
早速、帰ってから"トイレ掃除”に徹することにしようっと・・・。


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