「隠居宣言」

横尾忠則さんが古希を迎えて「隠居宣言」をしたと聞いた。
有名なイラストレーターらしいとしか認識がなかった。
本当はグラフィックデザイナーというお仕事をしている人らしい。
60年代に若者文化の象徴的存在となり、広告界に革命をもたらし、その
後も美術の第一線でエネルギッシュに活躍中である。
欧米でブレークして、グローバルに認められたアーティストだ。
彼は「宣言」好きで、68年の「死亡宣言」、70年の「休業宣言」、80年の
「画家宣言」、07年の「デザイン廃業宣言」「隠居宣言」している。
先ず「宣言」してから「実行」ということらしい。
「有言実行」だから文句ないのだが、その精神も大好きである。
たぶん、実行せざるを得ないところに自分を追い込んで行くタイプなので
あろう。
いろいろ話を聞いていると、彼は「哲学者」でもある。
彼は、06年の古希(70歳)の誕生日を迎えて、自分で若々しく生きてき
て年を感じなかったが、「ああ、これで老人になったのか」と悲嘆にくれる。
数年前より体調を崩して入院したりして、肉体の老化に気づくのである。
そして、「隠居宣言」をする。
隠居といっても、江戸時代の普通の隠居ではなく、縁側でお茶をすすり
盆栽に明け暮れるわけではない。
彼は、「内面的隠居」と言っているが、心の問題だという。
いやなことはなるべくしないようにして、好きなこと、自分が主人公になっ
てしたいことだけをするというのである。
それで、クライアントの要求や、その他もろもろの制限のある「グラフィッ
ク」の仕事をやめるのである。
「グラフィック」はお仕事で、「絵画」はお遊びである。
言葉を変えると、「グラフィック」は経済生活で「絵画」は人生である。
「グラフィック」には少々の思想があればいいが、「絵画」には哲学がな
ければならない。
「絵画」には、生き方が問題になり、「私とは何者か」または「何故生ま
れてきたのか」という命題をやることだ・・・と言う。
そういった中で、「グラフィック」をやめ「絵画」に没頭する。
「公開制作」という冒険もしている。
「公開制作」というのは、何十人かのギャラリーの前で、150号のキャン
バスに「Y字路」をテーマに絵を描く。
彼は、観客の前で絵を描くことによって、「私意識の消滅」、「自我の喪
失」迷い・思案がなくなるという。
絵を描きながら、「僕の作品はすべて未完である」とも言う。
他に、小説も書き、「ぶるうらんど」では、泉鏡花文学賞を受賞している。
多才なのである。
最後に、「肉体の声を聞け!」(肉体に素直であれ)とか、「少年の心を
忘れるな!」とエールを送り、「冒険をしろ!」と”老人”を叱咤するのである。
大好きだなあ!忠則さん・・・。
P・S
彼は、「隠居宣言」をもう少し早く、60歳のときにしておけばよかった
とつぶやく。
うっふふふふふ・・・。






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